本研究は、医学部卒業時OSCEで測定する臨床能力、測定方法、成績集計と判定方法、評価の信頼性を解析し、望ましいOSCEの計画と適切な成績判定方法を提案するものであり、23年度は、22年度に改善した課題作成、評価項目、評価方法を用いて、新たに9課題のデータを収集した。同一受験生が受験する3つの課題のデータの比較、模擬患者がコミュニケーションだけではなく身体診察の被検者となって評価を行う課題の開発と模擬患者養成も行った。 21年度から23年度に作成した21課題についてコンピテンシーのsubcategoryの項目得点、合計点、科目総合点、概略評価を解析した結果、1)subcategoryの評価項目の信頼性からは、情報収集、身体診察、患者への情報提供、診療録を用いた臨床推論、コミュニケーション・対人関係の評価が基本評価項目として推奨された。2)6段階の概略評価は教員が1~6、模擬患者は2~6に分布し、臨床能力を幅広く評価する課題であることが示唆された。3)同一受験生に実施した3課題の比較検討では、課題により同一subcategoryの得点傾向が異なり症例特異性に対応する異なる能力を課題毎に評価している可能性が示された。課題の総合点を用いた判定が推奨された。4)妥当性、信頼性を向上させるためにはより多くの課題を行うことにより臨床能力の総合的な評価ができるが、信頼性を0.8以上にするためには6時間以上が必要と推測された。5)教員および模擬患者の概略評価とコミュニケーション・対人関係技能の評価は低い相関は認めるものの、評価者により評価傾向は異なることが示唆された。 本研究で開発した課題により医学部卒業時に医学生が修得しているべきコンピテンシーの有無を評価できることが示され、これらの課題をブループリントに基づいて組み合わせたOSCEの実施が望ましいと考えられた。
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