研究概要 |
住民がH1N1パンデミックの際にどのような受診行動をとったかについて、京都のベットタウンであるK市のある地区で悉皆調査を行っている。研究計画では、葬祭業者を含む他業種への調査であったが、葬祭業者などの業者は数が限定され、特定されることで適切でないと判断した。また、住民の悉皆調査を行って、実際の行動を明らかにする方が研究上意味があると判断し、住民調査に切り替えた。調査は11,183戸に対して質問票を戸毎に配布する方法で行われた。回収率は19.8%であった。2,217世帯中、独居世帯は164世帯(7.6%)であった。もっとも多いのが2人暮らしであり(743世帯、34.3%)、次が4人家族の507世帯(23.4%)であり、5人世帯までで全世帯の94.9%を占めていた。独居者の平均年齢は66.5歳(range:27-93歳)で平均居住年数は30年であった。このうち自動車免許を保持していないものは49名(30.0%)で、2009年5月から2010年3月の間に新型インフルエンザ(A/H1N1)にり患したものは5名で、全員が誰の付き添いもなく自力で病院に行っており、1人は徒歩で4人は自動車で行っていた。 「地域での見守り」に対する住民全体の意見では、「大いに賛成」「どちらかというと賛成」を合わせると69%が賛成をし、反対という人は2%であったが、自らの家族構成あるいは家族の緊急連絡先を隣近所に知られたくないという人は7.2%あり、民生委員にでもどちらも知られたくないと14.2%が回答していた。このうち独居者は自身の家族について、約4人に1人は近所の人にも知られたくないと回答する一方で、連絡先も開示しても良いという人は半数に上っていた。「よそ者」感を感じつつも、防災訓練、夏祭り等の行事には参加して、隣近所とも良好な関係性を維持し、ちょっとした買い物を頼める人もいる。そういう独居者像が浮かび上がってくる。町への帰属性というよりは、近所付き合いの中で関係性を維持しているという実態が明らかとなった
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