本年度は、第一に訪問看護ステーション(以下、VNSと略)の組織および財務の実態、および連携の実態を明らかにするため、これまでに収集したインタビュー調査の内容や既存の文献を分析・検討した。その結果、訪問看護師は、物理的な環境がそれぞれ異なる療養者の居宅を訪問して看護活動を行うため、VNSは有機的構造を採用する必要があることが明らかになった。また、VNSを運営している医療法人の協力によって得られた財務諸表を詳細に分析した結果、同一法人が運営するVNSの場合、地域間の地理的格差や経済的格差よりも、VNSの運営努力の方が収益などに大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。加えて、VNSと同一地域内にある病院の規模が、VNSの収益に影響を与えることも明らかになった。 これら二つの研究成果は、訪問看護ステーションをネットワーク化し経営基盤を強化する際に、個々のVNSは有機的構造を採用しているため、ネットワーク化する際に所長だけでなく各看護師も含めた形でネットワーク化しなければならないことを明らかにし、さらに、連携する際に病院との連携が重要であることを明らかにしたことから、大変有意義であったと言える。 さらに、他国における訪問医療の実態と比較し分析するために、訪問医療を行っている中国天津市の大学付属病院の協力を得て、数名にインタビュー調査を行った。調査の結果、中国では各診療所が通常の診察だけではなく、疾病の予防のためにも訪問医療を行っているということが明らかになった。このような内容は、日本におけるVNSの事業領域を拡大して経営基盤を強化する上で大いに参考になり、大変有意義であったと言える。
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