研究概要 |
本年度は、訪問看護ステーション(以下VNS)の経営基盤を強化するためにどのような経営戦略をとれば良いか、特に、他の医療機関などとの連携によるネットワーク化を中心に明らかにするため、前年度までに行ったインタビュー調査や理論的考察を基にアンケート調査を行った。 本アンケート調査は、平成23年9月1日から17日にかけて、全国訪問看護事業協会に所属する3,344箇所のVNSにFAXで質問票を送付し、このうち、1,015箇所から回答を得た。回答を集計・分析した結果、以下の点が明らかになった。第一に、VNSは他のVNSとの連携を重視している、という点である。主な連携先として30.0%が「他のVNS」と回答しており、次いで「同一法人の病院」が26.3%であった(複数回答可、以下同様)。また連携内容について尋ねたところ、「利用者に関する情報の共有」が最多で44.4%を占めており、次いで「講習会・勉強会の共催」が31.6%となっていた。これらの結果は、VNSが他のVNSと競争せずに、地域内で協調・連携しながら成長することを目指していることを明確に示している。 第二に、訪問看護ステーションは連携の強化を目指す一方で、連携する際に連携先との連絡・調整で問題が発生しやすい、という点である。回答したVNSの81%が、今後他の機関との連携を強化すべきであるとしていた。一方で、連携する際の課題として最も多かったのは「連携先との連絡・調整が困難」であり、69.4%があげていた。 これまでの研究では、本研究のように訪問看護ステーションの連携戦略の重要性や、さらに踏み込んでネットワークを構築する際に連携先との連絡・調整に工夫が必要であることを実証的に明らかにした例はない。そのため本研究の研究結果は、VNSが看護ネットワークを構築し、経営基盤を強化する上で大変有意義である。
|