本邦では体外循環技士は自分だけは事故を起こさない、また心臓外科医は自分の技士は事故がおこってもきちんと対処出来ると考え、トラブル対処の訓練をほとんど行ってこなかった。そのため1度事故が起きると、適切な対処ができないため患者が重篤な障害を受けたり、死に至ることが少なくないことが報告されてきた。本研究の目的は人工心肺の安全性を向上させるためにトラブル対処のシミュレータをデザインし、標準化できる訓練システム・プログラムを開発し、日本の現状にあったトレーニングシステムを確立し、その結果得られた教育効果により心臓血管外科手術の成績を向上させることである。さらには国際語で日本での知見を広く発信することである。 本年度は、(1)訓練プログラムの作成、(2)シミュレーション用人工心肺回路の設計、(3)基本トラブル対処シナリオの作成、(4)シミュレータの種類と特徴の分析、等を計画にし研究を遂行した。多種多様のシナリオに適したフル装備のECCSIM-ORIGINAL、また簡易型のシミュレータで流量および貯血槽レベルを記録するECCSIM-Liteを設計・製作した。ECCSIM-Liteは研究室内で、また安全教育のためのセミナーに出前し、データを採取した。またアイトラッキングを含むモニタリングシステムにより客観的評価を可能にした。さらに、トレーニングプログラムの標準化を試み、施設にあったプログラムおよび装置の提案を行い、論文にまとめることができた。安全教育について国際語で書かれた文献の調査を行ったところ、指導者となるメンター教育が日本では発達していないことが明らかになった。また、文献調査をしていて、日本発の論文がPubMedに正確にIndexingされていないことに気がつき、PubMedの管理を行っているNLMに調査に行き、原因を明らかにすることができた。改善策を見つけたい。
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