人工心肺のトラブル対処訓練および安全教育は重要であるため、体験学学習、コンピュータを用いたシミュレーションなどを計画した。コンピュータ制御のシミュレータで、臨床で経験することが多い、あるいは希にしか経験しないが重篤になりやすい種々のトラブルを発生させ、対処し、訓練効果を客観的に評価した。訓練プログラムは、コンピュータ上のシミュレーション、実際にポンプをまわすなど訓練効果が大きくなるように工夫した。訓練プログラムの検討では、貯血槽の血液を体に戻し、貯血槽レベルが下がるために空気送り事故が多く発生する体外循環離脱時を想定し、流量をさげ、volumeを戻す操作を練習するための、シナリオを作成した。また、体外循環用シミュレーションをデザインし、トレーニング用システムにおける回路、ポンプおよび貯血槽と人工肺のアレンジメント、評価方法の工夫を行った。患者モデルとして高機能なECCSIM-Workshopを用い、体外循環の安全装置の比較脱血量と貯血量の変化ECCSIM-Liteで測定し、Power Laboにて記録した。人間の血液の粘度に近づけるためにグリセリン水溶液を用いた。 また、体外循環装置が開発されてから50年以上経過するが、今までには無い安全装置の概念を持つ、貯血槽レベルの安定化機能を装備する新しい安全装置の開発を行った。これの動作確認にて、市販の安全装置に比べ、安全性が高いことを確認した。今回開発した安全装置は、日本人工臓器学会の技術賞を受賞するほど画期的な装置であり、今後、国際的にも評価されることが期待される。 本研究課題は、人工心肺を用いた体外循環の教育および安全性に大きく寄与するものと考える。
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