本年度の研究は、受入れ病院に対するヒアリング調査、送り出し予定国政府に対するヒアリング調査とともに、これまで外国人看護師を受け入れた全医療施設に対してアンケート調査を行った。 送り出し予定国はタイを選んで、介護福祉士派遣の保健省責任者にヒアリング調査をした。タイでは急速に高齢化が進んでいるが、その準備のために専門学校等を整備しても、現時点での介護士のニーズは多いわけではないという事情がある。そこで、現在は海外への派遣をも考慮に入れた専門学校が設置されている。EPAに基づく介護福祉士派遣の事情にはこのような当面の需要を満たす目的と、将来に向けた国の介護の仕組みに関するノウハウを身に着ける目的があることが明らかになった。 アンケート調査では、152施設を対象に調査を実施し100施設(65.8%)の有効回答を得た。受け入れの目的は、看護師不足の対策よりむしろ、国際交流の一環や国の政策への協力などの側面が強いことが明らかとなった。学習時間が4時間未満の施設では、「日常会話」「同僚との会話」に問題があるとの回答が多かった(p<0.05)。国家試験のサポート体制には、所在地による相違は認められなかった。 看護師国家試験の合格にむけて、厚生労働省においても検討がなされているが、2010年のEPAに基づく外国人看護師の合格者の日本語能力及び国家試験に向けた学習方法等についての知見を集約し来年の試験に向けた対策を講ずる必要がある。また、受け入れ施設側への国家試験に関する公的機関による支援体制を構築も求められている。その中で本研究はより良い受け入れシステムを作り上げるための議論の土台として、意義深いものと考えられる。
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