我々はお薬手帳の有用性を高めるために「2次元コードお薬手帳鑑査システム」を開発した。すなわち、お薬手帳ラベルに、活字と同時に2次元コードで処方内容を印字する。それを2次元コードリーダーで保険薬局のレセプトコンピュータへ読み込み、他の処方薬との重複や相互作用のチェックを、レセプトコンピュータ内臓の薬剤鑑査システムを用いて行おうとするものである。平成23年度は同システムの臨床現場への普及を目指し、保険薬局薬剤師へのシステム紹介を行った他、臨床現場におけるお薬手帳のチェック状況の調査、ヒトの知識や書籍を用いた場合と本システムを用いた場合の薬剤鑑査の精度や速度を比較することによる本システムの有用性の検証などを行った。システムの紹介及びお薬手帳チェック状況調査は平成23年11月宮崎市で行い、前年度大分市での調査と合わせ、お薬手帳の薬剤鑑査方法は、自分の知識:60%、書籍:20%、レセプトコンピュータ:16%、その他:4%であった。お薬手帳の薬剤鑑査でチェック漏れがあると思うかどうかについては、ほとんどない:3%、少しはあるかも:66%、多くあるかも:32%であった。本システムを業務で活用したいかどうかについては、是非使いたい:29%、試してみたい:61%、活用は難しい:11%であった。本システムの有用性検証に関しては、お薬手帳記載処方と薬局へ提出された処方せんへの記載処方を想定した模擬処方を作成し、その鑑査に要する時間と鑑査精度を測定した。人の知識及び書籍を用いた時、鑑査精度は86.7%、処方1組の鑑査速度は220秒であったのに対し、開発した鑑査システムを用いた場合、鑑査精度は100%、鑑査速度は8.2秒であった。これらの結果より、本研究により開発した2次元コードお薬手帳鑑査システムは、臨床現場に必要とされ、お薬手帳を用いた薬物療法の有効性・安全性向上に寄与するものと考えられた。
|