研究概要 |
低出生体重児の減少を目指した低減策として、母体喫煙ならびに葉酸サプリメントの使用と低出生体重との関連を検討した。母体喫煙または受動喫煙と出生体重に関する既存の報告24報を検討したところ、母体喫煙による低出生体重のリスクは約2倍、受動喫煙によるリスクは1.3倍と推定された。葉酸サプリメントによる介入研究の分析を行ったところ、有効であるという明確な結果は得られなかった。以上により、低出生体重児の減少を目指した保健政策としては、妊婦の禁煙徹底がより効果的であると考えられた。 各都道府県では、母子保健法に基づいて出生時体重が2000g以下の児に対し、生後1年未満までの入院治療費助成を行っている。1997~2010年の14年間の給付状況を分析したところ、給付を受けた実人員は1997年に21017名、2010年に26364名へと増加し、公費負担額は、この間に約37億円から80億円と約2.2倍に増加していた。各都道府県別の分析を行ったところ、給付実人数の増加と給付総額にはR2=0.524と強い正の相関が認められた。 長野県の一保健所管内の未熟児医療費の分析から、平均入院日数は出生体重が低い児ほど長く、1000g未満の児では140.3日、1000-1499gでは57.4日、1500-1999gでは38.2日、2000-2499gでは60.4日、2500g以上では22.6日であった。1日当たりの平均診療報酬額(医療費)が最も低かった群は2000-2499g群で43, 020円/日であり、1000g未満群94, 655円/日、1000-1499g群で60, 722円/日、1500-1999gでは50, 428円/日であった。 患者調査の、1996~2008年の0歳児データを用いた分析では、傷病大分類で「XVI周産期に発生した病態」に相当する患者数は2008年には28000人と推計され、そのうち16000人が「妊娠期間及び胎児発育に関連する障害」と分類された。これは、1996年の推計ではそれぞれ22000人と12000人であったのに比べ、増加傾向にあった。また、「妊娠期間及び胎児発育に関連する障害」で入院した0歳児の平均在院日数を比較すると、1996年には平均10.5日であったのが、2008年には平均58.3日と大幅増加がみられた。
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