研究課題
これまで、肺高血圧症、ブレオマイシン肺線維症などの慢性肺傷害では、骨髄由来の前駆細胞が肺に誘導されることが確認されている。しかし、これらが上皮に分化することを、私たちの施行したような高解像度の多重免疫組織染色像で証明したものはない。さらに私たちは、今回の申請に先んじて、敗血症病態で骨髄由来前駆細胞を肺胞上皮分化細胞として呼び寄せるいくつかの方法を確認した。そして、骨髄由来前駆細胞の「立体的組織多重染色法」を敗血症モデル動物において確立した。予備実験では、敗血症病態で出現する幼若球と評価されている白血球系の中に、抗CD68抗体陰性(非マクロファージ性)、抗cytokeratin抗体陽性(上皮性)の特徴を持つ細胞を見出した。これらの細胞は、2型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞に分化する特徴を持つと考えられるが、マクロファージに類似した作用は持たず、肺におけるアンチトロンビンIII(ATIII)や成長因子の活性に依存して、増加することが予測された。本研究は、敗血症病態における、おそらくは骨髄から動員されると考えられる骨髄由来多能性前駆細胞(bone marrow derived pluripotent progenitor cells ; BMDPPCs)を血液中に増加させ、急性肺傷害などの臓器傷害部位に誘導する新規治療原理を提案することを目的とする。本研究は、特に救急領域における創傷治癒促進に、血管内からの新しい治療原理を与えるものである。さらにまた、COPDなどの慢性肺疾患の肺胞再生、腫瘍切除後の欠損部位の再生、肺移植適用患者さんへの移植前延命的治療などにも新しい治療法のオプションをもたらすことが可能である。
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/pharma/index.html