研究課題
本研究は、敗血症病態における骨髄から動員されると考えられる骨髄由来多能性前駆細胞(bone marrow derived pluripotent progenitor ceHs; BMDPPCs)を血液中に増加させ、急性肺傷害などの臓器傷害部位に誘導する新規治療原理を提案することを目的としている。これまでに我々は、敗血症病態で出現する幼若球と評価されている白血球系の中に、抗cytokeratin抗体陽性(上皮性)の特徴を持つ細胞を見出している。これらの細胞は、2型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞に分化する可能性が考えられ、あるいは2型肺胞上皮細胞や血管内皮細胞に対し生存を促す作用があると考えられた。平成23年度までに、LPS誘導敗血症モデル肺において、細胞表面抗原の違いにより少なくとも2種類のBMDPPCsの存在が考えられた。FACSを用いた解析の結果、CD34陰性BMDPPCsは非常にacuteに動員される(敗血症惹起後1時間以内)ことが明らかとなった。一方、CD34陽性のBMDPPCsは、CD34陰性BMDPPCsよりも動員が遅いことが確認された。2種類のBMDPPCsを培養した結果、CD34陽性のBMDPPCsのみ培養が可能で、貧食能を有することも観察された。免疫細胞化学による表面抗原の解析結果から、CD34陽性細胞はマクロファージ系抗原を示さず、増殖能および分化能を有する可能性が示唆された。同定された2種類のBMDPPCsをGFPマウスからFACSによって単離し、敗血症を惹起した野生型マウスに投与したが、炎症状態の肺にはほとんどリクルートされず、他の網内系組織等でトラップされていることが示唆された。現在までに、急性心筋梗塞モデルなどで傷害部位にリクルートされる単球/マクロファージは脾臓がリザーバーとなっていることが示唆されているので、本研究で同定したBMDPPCsは脾臓を一時的な待機場所としているのかも検討した。腓摘モデル等の検討結果から、BMDPPCsは脾臓を経由せず、骨髄から直接リクルートされることが強く示唆された。今後は骨髄から直接BMDPPCsを単離し、炎症肺にダイレクトに投与する方法やex vivo系による経時的な可視化の系を構築することによってBMDPPCsの可能性を検討したい。
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/pharma/index.html