研究課題
本研究はHIV-1逆転写酵素(RT)の酵素活性に直接関与していないと考えられてきたconnection subdomainに位置する新規多剤耐性変異N348Iの意義を解明し、今後の治療成績の向上を目的としている。平成22年度はN348Iが他の耐性変異とどのような相互作用をするのかを解析した。N348Iは一度取り込まれた核酸系RT阻害剤を切り出してDNA合成を再開する機序(excision)によって耐性を獲得することから、この機序と相反する変異であるM184V等を導入し、その影響を検討した。この相反する変異は耐性度を低下させることを確認した。さらに逆転写酵素の生化学的な解析のために発現ベクターを構築、大腸菌でRTを作製、精製した。RTは2つのsubunit p66とp51からなるheterodimerであることから、N348Iをp66のみ、p51のみ、そして両方に導入した酵素を使って検討した。その結果、p66またはp51どちらにおいても非核酸系RT阻害剤であるnevirapin(NVP)に対する耐性を獲得した。p66におけるN348IはRNase H活性には影響を及ぼさなかった。また、N348Iが導入されたRTはDNA合成能が低下したおり、これがウイルス複製能の低下の原因だと推測された。NVPに対する耐性はN348Iが導入されたことによるNVPの結合力の低下であることを明らかとした。本年度の結果から、N348Iは作用機序の異なる2つのRT阻害剤に対し、核酸系では阻害剤のexcision、非核酸系では結合能の低下という2つの耐性機序を併せもつ変異であることを明らかとした。このことは今後N348Iのgenotype assayによる検出が感染患者における治療効果判定や薬剤選択において重要であることを意味する。
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