研究課題
平成21年4月に施行された改正「臨床研究に関する倫理指針」の細則には、当該臨床研究の実施に伴い被験者に生じた健康被害の補償について「…被験者の負担するリスク等を評価し…リスクの程度に応じて補償する…」と記載されているが、自主臨床試験の実態を把握していない損保会社ではそのリスク評価がきわめて困難なため、政府は「医法研補償のガイドライン」に基づく治験保険に準じた補償保険の開発を指示したものの、現実にはその設定に支障を来している。また、平成22年11月に施行された改正「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する倫理指針」では、研究責任者は実施計画書に、健康被害の補償のために必要な措置を記載することとなったが、補償保険の開発が遅れているため、この倫理指針に沿った補償措置を講じることも困難な状態である。このままでは、限られたカテゴリーの臨床試験のみに、限定された範囲の補償が設定されたり、著しく高額め保険料が設定されることになりかねず、研究者自らがリスク評価に取り組まない限り、問題を解決できない。そこでわれわれは引き続き1.臨床試験保険の開発状況と問題点2.細胞・組織製品の介入を伴う臨床試験に対する補償3.医療費・医療手当などに対する補償について研究を重ね、今年度は、臨床研究機関の研究者支援組織の実務者と民間保険会社の商品開発担当者とともに「自主臨床試験のリスクに応じた被験者保護に関する研究会」を発足し、平成23年4月と11月に同会を開催した。これらの成果を、第32回米国臨床試験学会年次大会、第24回欧州医薬品情報協会年次大会、第3回日本臨床試験研究会学術集会等で発表するとともに、国内外の研究者と情報交換を行った。
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