研究概要 |
用量調整の難しさが特に治療上の問題点となっている抗真菌薬療法に関し,薬物動態(PK)-薬力学(PD)-ファーマコゲノミクス(PG)を統合したアプローチを,標的部位である体液組織に適用することにより,治療効果を最大化する個別的至適投与法を確立することが本研究の目的である.昨年の初年度に続き,本年度は以下のとおり実施した. 1.体液組織・血液サンプルの採取システムの構築:研究協力施設において,病院全体の協力連携を進め,体液組織および末梢静脈血を採取するシステムをさらに整備した.各施設での臨床研究(倫理)委員会の承認を得て,患者の同意を得た後に,サンプルを取得した. 2.抗真菌薬の体液組織中・血中濃度測定システムの構築:アゾール系抗真菌薬およびキャンディン系抗真菌薬について,簡便で臨床応用に適した体液組織の前処理・定量方法をさらに改良したうえで,サンプルを測定した. 3.PGおよびPDデータの収集:各患者で,薬物代謝酵素チトクロームP450の一塩基変異多型(野生型,ヘテロ変異型またはホモ変異型)に関する情報を引き続き収集した.また,患者基本診療情報に加え,抗真菌薬療法に対する薬物反応データとして有効性および安全性データ,さらには原因真菌に関する情報を引き続き収集した. 4.モデリングおよびシミュレーション:抗真菌薬の体液組織中・血中濃度データをPK解析し,PGデータを共変量として組み込んで,PKとPDとの関係を引き続き解析した.これらの結果を統合したモデリングを行ったうえで,このモデルを用いたモンテカルロシミュレーションにより,個別的至適投与法をさらに検討した.
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