研究課題
糖尿病は網膜症、動脈硬化症などの合併症を引き起こし、失明、心筋梗塞などのリスクを高める。そして患者の多くはインスリン抵抗性を示す2型糖尿病である。我々はST-13前駆脂肪細胞の分化誘導活性を指標にすることによって、インスリン抵抗性克服の鍵分子であるアディポネクチンの発現を促進する活性物質を検索できる新しいスクリーニング系を確立した。本研究では、この新しいスクリーニング系を駆使してアディポネクチン発現促進物質を見出してその作用機序を明らかにし、2型糖尿病治療薬として開発するための基盤を確立する。本年度は以下の点について研究を行った。1)96種類の糸状菌培養ろ液のブタノール抽出液を用いて、ST-13前駆脂肪細胞に対する分化誘導作用を検討したところ、P-16株が顕著な活性を示したので、各種クロマトグラフィーを用いて活性本体の単離・精製を試みた。その結果、活性体として3種類の化合物の単離・同定に成功した。そしてその中の一つであるノルリケキサントンは、(1)アディポネクチンの分泌タンパク量とmRNA発現量を濃度依存的に増加する、(2)このmRNA量の増加は転写レベルが促進された結果による(3) fullなPPARγアゴニストであるチアゾリジン化合物と異なり、PPARγアゴニスト作用をほとんど示さない、ことなどを突き止めた。これらの結果は、ノルリケキサントンがチアゾリジン化合物とは異なる作用機序を有する、ユニークなアディポネクチン発現促進物質であることを示すものと考えられた。2)ノビレチンは、我々によってアディポネクチン発現促進物質として再発見されたポリメトキシフラボノイドである。ノビレチンとその類縁体を用いて、ノビレチンによるアディポネクチン発現促進作用に関与する分子中の官能基の同定を試み、C-6とC-3'のメトキシ基が重要であることを明らかにした。
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