研究課題
網膜症、動脈硬化症などの合併症を引き起こして失明、心筋梗塞などのリスクを高める糖尿病の患者の90%以上は、インスリン抵抗性を基本病態とする2型である。我々はST-13前駆脂肪細胞の分化誘導活性を指標にすることによって、インスリン抵抗性克服の鍵分子であるアディポネクチンの発現を促進する活性物質を検索できる新しいスクリーニング系を確立した。本研究では、この新しいスクリーニング系を駆使してアディポネクチン発現促進物質を見出してその作用機序を明らかにし、2型糖尿病治療薬として開発するための基盤を確立する。また見出したアディポネクチン発現促進物質の血管新生抑制作用を調べる。本年度は以下の点について研究を行った。1.理研から入手した化合物ライブラリーの中で、最も強力にアディポネクチンタンパク質の分泌を促進するものの一つであるプロピオン酸誘導体(846)は、(1)転写レベルでアディポネクチンmRNA発現の増大を濃度依存的にもたらし、その結果細胞外へのアディポネクチン分泌を促進させる、(2)fullなPPARγアゴニストであるチアゾリジン化合物と異なり、partial PPARγアゴニスト作用を有する、ことなどを明らかにした。2.東大・農学部・松永茂樹教授との共同研究によって、海洋無脊椎動物粗抽出物からST-13細胞分化誘導活性を示し、さらにアディポネクチン分泌促進作用を示す化合物の同定に成功した。3.アディポネクチンは血管新生に影響を及ぼすことが報告されているので、アディポネクチン分泌促進物質として我々が再発見したノビレチンが血管新生にどのような作用を示すか検討したところ、in vitroとin vivo血管新生モデル系で抑制作用を示すことを突き止めた。
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Cancer Sci
巻: Vol.101 ページ: 2462-2469