前年度の樹状細胞は腎線維化の発症早期には重要でないとの結果を踏まえ、樹状細胞以外の単球系の細胞の腎線維化早期および進行期における関与を検討した。実験にはジフテリア毒素を投与することで単球系細胞を選択的に除去できることが知られるCD11b-simian diphtheria toxin receptor(DTR)導入マウスを用いたが、継続的に単球系細胞を除去するために同マウスの骨髄細胞を全身照射したマウスに移植して実験に供した。尿管閉塞後5日目に見られる腎線維化に対し、ジフテリア毒素を投与すると腎臓の線維化は有意に抑制された。また腎線維化に伴い増加したF4/80陽性単球系細胞はほぼ完全に喪失した。同時にTGF-βおよびcollagen IIIの遺伝子発現も尿管閉塞により著明に亢進したが、これらの変化は単球系細胞の選択的除去に伴い抑制された。前年度の成果と今回の結果を合わせて考えると樹状細胞以外の単球系細胞が腎線維化の発症には重要であることが明らかとなった。次に腎線維化の進行期における単球系細胞の役割を検討するためにCD11b-DTR骨髄キメラマウスを用い尿管閉塞後15日における腎線維化に対し、後半の時期に単球系細胞を除去の効果を検討した。早期モデルとは異なり、ジフテリア毒素を頻回投与しても腎線維化に伴い増加したF4/80陽性単球系細胞は半分程度しか減少せず、また腎線維化は全く影響を受けなかった。TGF-βおよびcollagen IIIの遺伝子発現も尿管閉塞により著明に亢進したがジフテリア毒素投与によっても影響を受けなかった。この結果から進行期において腎局所に増加したF4/80陽性単球系細胞の一部は全身照射後も腎に残存し尿管閉塞により局所で増殖した単球系細胞の存在が示唆されると共に、これらの細胞の腎線維化への関与が推測された。
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