研究課題
肺静脈に対する薬物の作用特性を解剖学的および電気生理学的な手法により検討した。モルモット摘出心を用いて肺静脈内の興奮伝導特性を検討したところ、興奮伝導速度は心房内に比べて約半分程度(0.4m/s vs 1m/s)であった。肺静脈内の心筋細胞は中膜付近に分布しており、輪走筋様に心筋細胞は配列しているので、肺静脈内の興奮伝導は心筋細胞の短軸方向に進むと考えられる。心筋細胞同士の電気的結合は心筋細胞の長軸方向の両端に多く分布するギャップジャンクションを通じて行われることが知られており、心筋細胞の輪走筋様の配列がこの遅い伝導に関与しているものと考えられた。伝導遅延を誘発する薬物であるピルジカイニド(I群抗不整脈薬:ナトリウムチャネル阻害薬)を摘出心房-肺静脈標本に適用したところ、その効果は肺静脈でより強く観察された。次に、心筋活動電位記録法により肺静脈組織の膜電位を記録した。1Hzで駆動されている肺静脈組織の活動電位立ち上がり最大速度は194V/sであり、心房筋(216V/s)と比べて小さい値であった。これらの標本にピルジカイニドを適用したところ、立ち上がり最大速度の抑制は肺静脈標本でより強く観察された。肺静脈組織の静止膜電位は-74mVであり、心房筋(-80mV)と比べて浅く、電位依存性に効果を発揮するピルジカイニドは、その特性により膜電位の浅い肺静脈により強く作用したと考えられる。これらの知見は、心房細動の原因とされている肺静脈内異常興奮の心房への伝搬に対する薬物治療を行う際に、ピルジカイニドの作用特性を理解する上で重要なデータと考えられる。
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