研究概要 |
「組織リモデリング病態」は,病巣局所での病的な組織構造と機能障害を伴う重篤な難治性疾患であり,発症や増悪化の鍵となる重要因子を同定・解明する事は,疾患の未然防止や新たな治療法開発に通じる最重要課題である。私達は,組織リモデリング病巣局所に出現し,過剰な免疫亢進作用によって病態の増悪化を招く因子(内因性AGE)を発見した。本増悪因子(内因性AGE)は,細胞刺激に伴って核から細胞外へと局在移行し,細胞外でサイトカイン様活性を示す特徴的分子であった。内因性AGEに対する中和抗体は,疾患動物モデル(糖尿病や脳梗塞モデル等)において著効性を持つことから,内因性AGEの遮断が組織リモデリング病態の治療や予防に直結することを明らかにしてきた。 これらの知見に基づき,本研究では内因性AGEがマクロファージ/単球などの免疫担当細胞に対して,炎症性サイトカイン産生や細胞内NF-κB活性化などの免疫賦活作用を示すことを見出した。この知見を応用して,細胞レベルで内因性AGEを遮断する機能分子を新たに開発する際に,遮断作用を効率的に判定しうることが可能な簡便な細胞評価系を確立することに成功した。この評価系確立によって,内因性AGE遮断物質の開発が促され,組織リモデリング病態モデルを用いた個体評価系への橋渡し研究が,よりいっそう加速されるものと思われた。
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