研究概要 |
NKG2DシステムはNK細胞の主要な活性化システムである.NK細胞は腫瘍細胞などの異常細胞で発現が誘導されるNKG2Dリガンド(以下NKG2DL)を認識し,それを破壊する.このシステムはNK細胞以外にもγδT細胞にも存在する.マウスの皮膚免疫監視には常在性γδT細胞(DETCs;dendrtic epidermal T cells)が重要であり,NKG2Dはその認識機構に関与しているが詳細は不明である.H60cは皮膚に遺伝子発現が限局した新規マウスNKG2Dリガンドであり,平成21年度の研究でH60cはケラチノサイトに誘導される主要なNKG2Dリガンドであり,マウス皮膚に形成させた乳頭腫で発現が確認されたことから発癌などのDNAダメージにより誘導されることが推測された.その後,皮膚で可溶型H60c遺伝子の発現を確認した.可溶型NKG2DLは免疫監視回避機構としてヒトで報告はあるが,本研究で初めてマウス可溶型NKG2DLの存在を確認した.また,マウス皮膚に形成させた乳頭腫では可溶型H60c遺伝子の発現が増強している傾向が認められた.そこで皮膚扁平上皮癌における膜型,可溶型H60cの発現動態を確認する目的で,メチルコラントレンの皮内投与によりマウス皮膚に扁平上皮癌を形成した.更に,より詳細な発現解析を行うためにFACSや免疫染色で使用可能な抗H60cモノクローナル抗体を作製した.今後,作製した癌組織におけるH60c発現動態の詳細な解析を行い,皮膚腫瘍免疫における膜型および可溶型H60cの機能を解析する.
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