研究概要 |
平成22年度は、研究奨励対象におけるプロトコールの最適化を行うと共に、当院産婦人科との共同研究、"子宮内感染症の迅速検査"を立ち上げ、実用的な運用をスタートした。 1,"Eukaryote-made" thermostable DNA polymeraseの開発とその実用化:(株)北海道三井化学との共同開発により、真核生物である酵母をホストとして新たな耐熱性DNA Polymeraseを開発した。現在、耐熱性DNA Polymeraseには細菌ホストのDNAが少なからず混入しており、細菌検出を目的としたPCRでは偽陽性や感度低下の原因となる。我々は、細菌とは進化系統的に全く異なる真核生物の酵母を用い、新たに耐熱性DNA Polymeraseを開発することで偽陽性や感度の問題を解決した。真核生物をホストとした耐熱性DNA Polymeraseの開発は世界初である(国際特許出願:PCT/JP2010/050443)。本酵素を用いることで既存の偽陽性の問題を解決し、高感度なバクテリア検出が可能となる。 2,迅速起因菌同定システムの高精度化:測定機器の施行間誤差を無くす方法として、7つのTm値が二次元で描く"形"を同定することにより、施行間誤差を消すアルゴリズムを用いた同定ソフトウェアを開発した。 更に、サンプル間の誤差を最小限にするために、温度制御に最も優れるQIAGEN社のRotorGene Qを新たに導入し、Eva GreenとHRM解析を行うことで、サンプル間の誤差を±0.05まで下げることに成功した。 その結果、高精度の同定システムが実現し、50TrialのBlind Testにて、100%(50/50)の一致率を得た。即ち、本システムで正確に起因菌を同定できることを示した。 3,迅速起因菌同定システムの自動化:今後、敗血症検体を扱う場合など、多数検体に対処するために、検体からのバクテリアDNA抽出、および試薬の分注を全て自動化すべく、新規に機器(QIAgility, QIAqube)の導入を行った。 4,子宮内感染症の迅速検査の構築:早産を予防し、胎児を救命するために、先ずは子宮内感染症に本システムを実用化した。通常の検査では通常、3~5日を要するのに対し、本システムでは同定が2時間以内、感受性試験が4~6時間程度で報告可能とした。
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