研究概要 |
平成23年度は、研究奨励対象における起炎菌同定データベースの拡充を行うと共に、バクテリアコロニーや臨床検体を直接用い、繰り返しシステムの評価と修正を行った。 1,起炎菌同定データベースの拡充: コロニーからの同定の結果、Distance(データベース中の起炎菌との近似度を数値化したもの)の離れたバクテリアコロニーをデータベース中に存在しないものと判断してピックアップし、DNAを抽出してシーケンスを行い、菌種を同定してデータベースに入れ込んでいく作業を行った。本作業を繰り返すことで、起炎菌同定データベース(起炎菌同定ソフトウェアが動作するデータベース)中のバクテリアを102菌種まで拡充した。 2,迅速起炎菌同定システムの低コスト化: 起炎菌同定システムを安価なシステムとするために、各ステップの細部の見直しを行った。最も見直したものはシステムのスケールであり、20μL×7のPCRの系を10μL×7の系に変更した。10μLの系でも安定した同定結果を得ることが出来、試薬代を半分に抑えることに成功した。その他、各試薬の見直しを行った結果、1検体あたり1500円で、3時間以内に起炎菌を迅速同定出来るシステムが構築できた。 3,迅速起炎菌同定システムの評価: 本システムを評価するため、従来法との比較検討を行った。同定結果の一致率はMicro Scan Walkaway96SI(SIEMENS)と比較して算出し、不一致の場合はSequencingにてどちらが正しいかを判定した。その結果、100コロニーからの一致率は90%であり、従来法では嫌気性菌の同定結果に間違いが多かったが、本システムの同定結果は正確であった。また、臨床検体20検体で検討した結果、従来法では培養陰性が多かったが、本システムでは全て検出・同定が行われ、結果はシーケンスの結果と一致した。 4,臨床検体の適用の拡大: 本システムは元々敗血症検査を目的として開発したものだが、血液や羊水検体だけでなく多種検体での同定を試みた。新たに脳脊髄液、肝膿瘍、眼房水、心臓人工弁、喀疲、留置カテーテルのそれぞれを用いて同定を行った。その結果、複数菌が同等量程度に存在すると思われる検体では同定に至らなかったが、上記の全ての検体種において、それぞれ菌種の同定に成功し、シーケンスにて同様の結果を確認した。
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