本邦の血清HDLコレステロール値は欧米に比べ高いことが知られている。われわれは、一般人の約0.5%に高HDLコレステロール(HDL-C)血症>100mg/dLを認め、その成因の約50%はコレステリルエステル転送蛋白(CETP)のヘテロ接合体性欠損症であることを報告してきた。しかしながら、CETP欠損症以外の成因は肝性リパーゼ活性低下などが示唆されているが、遺伝的成因は未だ不明である。本研究は高HDL血症の成因としてリパーゼ活性を変動させる内因性補因子の異常の有無を検討する。内因性リパーゼインヒビターであるアンジオポエチン様蛋白(ANGPTL)3、4遺伝子の解析を高HDL-C血症を対象として行った。平成22年度は18名(男性6例、女性12例)の高HDL-C血症を追加対象としてANGPTL4遺伝子解析を実施した。対象者群の年齢及び血清脂質データは33~76歳(平均51歳)、総コレステロール224±49mg/dL、TG 83±31mg/dL、HDL-C 98±35mg/dLであった。方法は、患者末梢血由来ゲノムDNAからANGPTL4遺伝子のエクソン、プロモーター領域をLCgreen色素を含むPCR反応で増幅し、Light scanner装置を用いて融解温度曲線分析を行い遺伝子変異及び多型の有無をスクリーニングした。また、スクリーニング解析で融解温度に変化がみられる検体についてはシークエンス解析を行い、ANGPTL4遺伝子変異を検索した。結果として、現在10例の解析が終了したが、プロモーター領域の多型rs4076317(-12c>g)をヘテロ接合体で3例、エクソン1の5’非翻訳領域内でrs35137994(Ex1+56c>t)をヘテロ接合体で1例検出した。またエクソン6領域の多型rs1044250 c>t(T228M)をヘテロ接合体で3例検出した。これらの多型の頻度が一般日本人での頻度と異なるか検討を行う。
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