研究課題
糖尿病性腎症における腎障害の進展に慢性低酸素が関与している可能性を、糖尿病性腎症自然発症マウスを用いて検討した。正常圧性低酸素(11-12%O_2濃度)飼育装置で糖尿病性腎症自然発症マウスdb/dbマウス(雄)を飼育した。8-24週齢の屠殺時まで低酸素で飼育した群(Hypoxia群:n=11)と、8-24週齢まで常酸素で飼育した対象群(Normoxia群:n=12)の8、12、24週齢の腎の組織学的解析、腎mRNA(VEGF-A、PAI-1、MCP-1、TGFβ-1、CTGF)のreal timc PCR法による定量、血液データ、尿アルブミン、尿NAG、尿VEGF-Aなどを検討した。尿アルブミンは、低酸素飼育開始後2週目から有意に増加し、高値が継続した。しかし、腎VEGF-A mRNA、尿VEGF-A、免疫染色による糸球体VEGF-A陽性領域の何れも、両群間に有意な差を認めなかった。Hypoxia群はNomoxia群に比べ、糸球体サイズの増加、PAS陽性領域の増加、ポドサイト数の減少、微小血管瘤の増加、糸球体CD34陽性領域の減少を認めた。TGFβ1・CTGF mRNAは有意な変化を認めないものの、MCP-1 mRNAは12週齢以降で、PAI-1 mRNAは24週齢でHypoxia群がNormoxia群に比べ有意に増加していた。以上より、慢性低酸素環境は、VEGF-AやTGFβ-1を介さず尿蛋白の増加や糸球体腫大・硬化病変などの糸球体障害を生じさせ、MCP-1・PAI-1 mRNAの増加がこれらの組織病変の増悪に関与している可能性が推測された。来年度はレーザーマイクロダイセクション法により糸球体のみのmRNAの解析を行い、さらなる詳細な検討を行う予定である。
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