我が国において大腸がん死亡数は年々増加している。2015年における癌患者数推計では、大腸がん患者数が癌患者の中で最も多くなることが予想されており、その対策は急務である。大腸がんの一次スクリーニングである便潜血検査件数は今後増加することが見込まれるが便潜血検査には以下の問題点が指摘されている。 1)早期がんにおける感度が低い(便潜血検査の感度は進行大腸がんでは70%前後、早期大腸がんでは35%前後に過ぎず、特に早期がんにおいては感度が低い)。 2)偽陽性率が高い(一次検診の便潜血検査が陽性であったため二次検診を受診した33万人のうち32万人が大腸がんを認めなかった(偽陽性)という報告からも分かるように、便潜血検査は偽陽性率が非常に高い)。 以上の問題点から、より精度の高い大腸がん一次スクリーニング法を開発する必要性が考えられたため本研究を行うに至った。平成22年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1)DNAチップによる網羅的解析を行い、大腸がんに特異的なメチル化遺伝子(候補)を発見した。 (3)それらの候補遺伝子の中から、正常大腸粘膜に比べ、大腸癌において高度メチル化を認める遺伝子を発見した。しかも単一遺伝子解析により両者を区別することが可能であった。本遺伝子のメチル化のレベルは大腸粘膜では平均9.4%(n=218)であったのに対し、大腸癌では平均57.4%(n=341)であった(P<0.0001)。 (2)安価に解析可能なPCRベースの解析法を開発した。また自動化解析を念頭においたパイロシークエンスや質量分析機による解析法も確立した。 (2)便検体を使用して大腸腫瘍スクリーニング検査の予備試験を行った。
|