我が国において大腸がん死亡数は年々増加している。2015年における癌患者数推計では、大腸がん患者数が癌患者の中で最も多くなることが予想されており、その対策は急務である。大腸がんの一次スクリーニングである便潜血検査件数は今後増加することが見込まれるが便潜血検査には以下の問題点が指摘されている。 1 早期がんにおける感度が低い(便潜血検査の感度は進行大腸がんでは70%前後、早期大腸がんでは35%前後に過ぎず、特に早期がんにおいては感度が低い)。 2 偽陽性率が高い(一次検診の便潜血検査が陽性であったため二次検診を受診した33万人のうち32万人が大腸がんを認めなかった(偽陽性)という報告からも分かるように、便潜血検査は偽陽性率が非常に高い)。 以上の問題点から、より精度の高い大腸がん一次スクリーニング法を開発する必要性が考えられたため本研究を行うに至った。平成23年度の研究実績の概要は以下の通りである。 便検体を使用して便DNAテストによる大腸腫瘍スクリーニング検査の前向き試験を行った。具体的には大腸癌症例のべ90検体、健常人ボランティア20検体、その他は前立腺癌や卵巣癌の直接浸潤、GIST、良性腫瘍など8検体の便検体を収集した。大腸粘膜上皮細胞を便中から抽出した後COBRA法によりTwist1のメチル化解析を行った。解析の終わった49症例中9症例でTwist1遺伝子のメチル化が確認されており、感度は約20%と便潜血と大差ない結果であったが、健常人の検体では検出されず、特異度は100%であった。現在の測定系では検査感度が20%と低いため、今後は高感度メチル化検出法を開発する必要がある。
|