研究概要 |
血小板凝集・活性化を病態に有する急性冠症候群の発症機序におけるヘリコバクター・ピロリ菌(感染)の関与を解明するため、先ず血小板凝集・活性化を誘導するピロリ菌体成分を検索した。その結果、HpLMPである幾つかの候補菌体遺伝子(蛋白)を見出し、最終的に細胞膜構成成分であるlpp膜蛋白を同定した。さらに、急性冠症候群患者の血中あるいはプラークに本成分の関与を検証するため、リコンビナント融合蛋白(lpp-His蛋白)を作製し、ウサギに免疫後(約3ヶ月)、ポリクローナル抗lpp抗体を作成した。抗lpp抗体の特異性は免疫沈降を伴うウエスタンブロットで確認した。免疫沈降は血小板とlpp-His蛋白を反応後に抗血小板抗体で沈降し、抗lpp抗体を使用した(抗His抗体でも確認)。結果は良好で作製した抗lpp抗体は目的蛋白であるlpp膜蛋白と反応し他成分との交差反応は殆ど認めなかった。次に100株以上のピロリ菌株を便用してlpp蛋白コード遺伝子の保存状態をPCRで解析した結果、全ての菌株で保存されており、diversityも認めなかった(PCR productサイズでの判定)。また、解析した10株(国外株4株(26695,11637,J99,SS1)を含む)全てでlpp蛋白の発現を確認した。以上より、全てのピロリ菌は本遺伝子を保有しかつ恒常的に発現していることが判明した。さらに、動物感染実験よりピロリ菌感染スナネズミの血液から血小板を採取し解析した結果、lpp蛋白が検出された、このことは、動物生体内でlpp蛋白が血中内へ移行し、少なからず血小板と結合している事を初めて証明した重要な成果である。今後は患者検体を集積して詳細な解析を実施して本菌関連疾患の病態解明に繋げる予定である(研究内容等は高知大学倫理審査委員会で承認済)。
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