研究概要 |
これまでの結果からヘリコバクター・ピロリ菌の増殖・細胞分裂には申請者らが見出したcdrA遺伝子の関与が示唆され、またその現象(形質出現)には細胞分裂に重要なFtsZとの関連性も考えられた。そこで、ピロリ菌株(26695とHPK5)のftsZとcdrAからHis融合蛋白を作製し、ウサギにてFtsZとCdrAのポリクロ抗体を作成した。その特異性をウエスタンブロットにて検証した結果、抗FtsZ抗体、抗CdrA抗体共に特異的に目的蛋白の検出が可能であった。菌株間による解析結果、菌株間のCdrA蛋白発現量に相違を認めた。これは、cdrA diversityに依存(HPK5株cdrAはユニークで、26695株と比較するとゲノム上で近傍遺伝子とfusionしていることが判明)していると推察された。26695株等はHPK5株cdrAと完全一致する蛋白は有していない。 さらに、ピロリ菌の細胞増殖・分裂を詳細に解析するため、細胞分裂制御遺伝子・蛋白(MinC,D,E)、FtsZ、CdrAに注目しこれら分子間相互作用や菌体内作用機序の解析を開始した。そこで、先ず各遺伝子機能を確認するためHPK5株で各遺伝子(minC,minD,minE)の破壊株をKmとCm遺伝子挿入により作成した。HPK5ΔminE株はややフィラメント化し、HPK5ΔminC株とHPK5ΔminD株は異常な程にフィラメント化を示したが、3破壊株とも増殖と分裂は野生株同様に行われていた。このことより、ピロリ菌においてはminC,D,E遺伝子(特にminCとminD)は菌体の形態形成(長軸制御)に関与している可能性が示唆された。今後は、double破壊株(minCD,CE,DE)とtriple破壊株(minCDE)を作成しFtsZやCdrAの発現および細胞内局在等についてさらに解析を進める。
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