現在、診療での利用を前提とした遺伝子診断では、翻訳領域内の各エクソン領域をPCR増幅し、その塩基配列を直接シーケンシング法により決定し、各エクソン内の点変異・欠失・挿入を検出することが一般的である。しかしシーケンシングに基づく方法では、遺伝子内欠失・重複のサイズがPCR増幅する各エクソン(一般的には~400塩基対)よりも大きな場合、欠失のある側の染色体からはPCR増幅が起きず、異常のない側の染色体から正常アレルの増幅がされるためにシーケンシング法に基づく検査結果は見かけ上、正常になってしまい、感度が100%には達しないことが臨床応用する上で問題となっている。本研究では、シーケンシング法では検出できない遺伝子異常である「複数エクソンを含む遺伝子内欠失」を網羅的かつ高感度に検出しうるシステムを作成する。これまでの研究により、先天異常症候群25疾患(30遺伝子)の患者約500名について既にゲノムDNAを収集し、患者・両親の同意を得てDNAを保存している。これらの患者のうち、エクソン内の点変異・欠失・挿入が同定されていない患者(150名)・両親から、オリゴDNAアレイCGH法による再解析について検討を行う。本年度は、オリゴDNAアレイ・デザイン用ソフトウェア(アジレント社のeArray)を用いて5疾患についてエクソン欠失・重複の検出に特化したアレイデザインを設計し、そのプローブの特異性を確認済みである。
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