研究課題
診療での利用を前提とした遺伝子診断では、翻訳領域内の各エクソン領域をPCR増幅し、その塩基配列を直接シーケーシング法により決定し、各エクソン内の点変異・欠失・挿入を検出することが一般的である。しかし、シーケーシングに基づく方法では、感度が100%には達せず、偽陰性と考えられる症例が少なからず存在し、遺伝子検査を臨床応用する上で問題となっている。本研究では、シーケーシング法では検出できない遺伝子異常である「複数エクソンを含む遺伝子内欠失」を網羅的かつ高感度に検出しうるシステムの作成を試みた。先天異常症候群10疾患(15遺伝子)の患者のうち、エクソン内の点変異・欠失・挿入が同定されていない患者を対象とし、患者・両親からインフォームドコンセントを得た後、オリゴDNAアレイCGH法による再解析をおこなった。10の古典的な先天異常症候群の原因遺伝子の各エクソンにプローブを配置したオリゴDNAアレイを運用した。60塩基程度の合成DNAプローブをスライドグラス上に配置した。10種の先天異常症候群の15の原因遺伝子の全エクソンに10~20個程度のプローブを配置した。患者に由来するゲノムDNAをCy5、正常対象者由来のゲノムDNAをCy3でラベル化し、アレイ上で65℃、40時間のハイブリダイゼーションを行い、マイクロアレイスキャナーにて、スキャンし、これを専用ソフトウエアにて数値化した後、各遺伝子のゲノムコピー数を解析した。本研究により遺伝性疾患の遺伝子診断の検査感度が100%に近づくことが期待される。今後は、対象とする遺伝子数を増やすことが必要である。ハプロ不全(遺伝子欠失)により発症することがこれまでに知られている約400個の遺伝子が国際機関ISCAによってリストされている。現在、マイクロアレイの高密度化にあわせこれらの遺伝子を含むシステムの構築を進めている。
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American Journal of Medical Genetics
巻: 158 ページ: 812-815
doi:10.1002/ajmg.a.35245
巻: 158 ページ: 514-518
doi:10.1002/ajmg.a.34400