研究概要 |
1.尿中ジアセチルスペルミンを早期癌検出の目的で腫瘍マーカーとして利用するためには、多数の健常者を対象として尿中ジアセチルスペルミンの健常者レベルを詳しく調査し、異常検出の指標となるカットオフ値を正しく設定することが必要である。そこで、研究の初年度にあたり、東京都職員健康診断の協力を得て、健康診断受診者の尿検体(男性3952名、女性1955名)について、ジアセチルスペルミン測定を行った。その結果、女性は男性と比較して全体としてジアセチルスペルミンレベルが高い(平均値:男性109.3,女性163.1nmol/g creatinine)ことが明らかになり、カットオフ値を男性、女性で異なるレベルに設定する必要があることが明らかになった。また、女性のジアセチルスペルミン排泄量は、20代、30代では50歳以上の年齢層と比較して高値を示す傾向があった。これらの知見は、判定基準の設定にあたって考慮すべき要因となる重要な知見である。 2.便潜血検査とジアセチルスペルミン検査の併用によって早期大腸癌の検出効率を改善する試みについて、東京都職員健康診断受診者を対象とする調査システムを立ち上げ、調査を開始した。本調査における異常検出数は年間数十件にとどまるため、今後の研究期間を通じて調査、解析を継続し、十分な症例数を蓄積する必要があると考えられた。 3.イムノクロマト法によるジアセチルスペルミン簡易検出系について、部材、使用抗体、検出用抗原固定化の条件などの基礎検討を行い、尿中の健常者レベルに相当する100nM前後のジアセチルスペルミン濃度においてテストラインの濃さが著明に変化する条件を見いだすことができた。今後さらに詳細な条件検討を進めることを計画している。 4.ESI-TOF質量分析法で尿中ポリアミンを定量する方法を確立し、ジアセチルスペルミンについては金コロイド凝集法による測定結果とよく一致することを確認した。
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