研究課題
1.東京都職員健康診断の協力を得て、健康診断受診者の尿検体(男性4046名、女性1970名)計6016名について、ジアセチルスペルミン測定を行った。女性は男性と比較して全体としてジアセチルスペルミンレベルが高かったため、カットオフ値を男性、女性で異なるレベルに設定し、それぞれ約5%の被験者について再検査を行ったところ、対象者約300名中2名から、白血病、子宮癌の申告があった。がん検診への適用の可能性について、なお、検討を続ける予定である。3.DiAcSpmの在宅検査を普及させ、自覚症状をもたない患者の早期掘り起こしを可能にするために、イムノクロマト法による簡易測定系の開発を進めた。21年度に引き続き、部材、使用抗体、について再検討を行い、数種類のモノクローナル抗体の中から最適の抗体を選択するとともに、抗DiAcSpm抗体標識金コロイド粒子の凝集を避けて分散安定化するための条件について検討し、尿中の健常者レベルより低い数10nMからカットオフレベルより高い400nM程度のジアセチルスペルミン濃度においてテストラインの濃さが著明に変化する条件を見いだすことができた。今後さらに詳細な条件検討を進め、がんの早期発見に資することを計画している。4.ESI-TOF質量分析法および金コロイド凝集法を用いて大腸がん手術検体中から得た組織抽出液中のDiAcSpm濃度を測定し、DiAcSpmが癌組織特異的に上昇していることを明らかにした。正常組織中にはポリアミンのアセチル体は一般にほとんど検出されない。癌組織中でDiAcSpmが検出されたのはこれがはじめてであり、がん特異的なDiAcSpm合成のメカニズムの解明は今後の課題であるが、その解明は、DiAcSpmががんマーカーとして優れた特性を示す理由の解明につながる可能性がある。アセチルポリアミン代謝関連酵素の動態との関連について、23年度に研究を進めることを計画している。
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日本分子腫瘍マーカー研究会誌
巻: 26 ページ: 70-71
日本臨牀 増刊号
巻: 68 ページ: 793-795