研究代表者は、平成20年に日本衛生学雑誌の英文誌に原著論文をのせ、広島の極低線量被爆者でも、広島・岡山両県の一般住民に比較して有意に高い各種のがん死亡が存在したことをLSS12に基づき、明らかにした。本年度は、これを受けて、長崎のLSS集団を、長崎県・佐賀県の一般住民と比較して、同様のことが言えるのかどうか、また、LSS13に発展させ、さらに長期間追跡した場合に、広島・長崎の被爆者集団のがん死亡が、非被爆者対照集団と比較して、線量別に、その程度のリスクが存在するのかについて、研究した。また、放射線影響研究所の研究者らが、なぜ、遠距離被爆者のリスクを低く推定してしまったのか、について同じく日本衛生学雑誌の英文誌に21年春に詳細なコメントを載せたが、これをさらに発展させ、長崎を含めて分析を行った。 平成21年度の研究では対象として、寿命調査第12報(LSS12)における長崎の被爆者集団(LSS-Nグループ)と、対照群として、長崎県の全人口(長崎県全住民対照群(NPCG))と隣の佐賀県の全人口(佐賀県全住民対照群(SPCG))を用いた。標準化死亡比(SMR)を算出するにあたり、長崎の被爆者集団と2つの対照群のデータを、ともに、性別、被爆時年齢別(5歳階級)で集約し、分類した。本研究では、県別の人口動態統計から得られる死因別死亡数と年齢階級ごとの人口を利用した。結腸線量(シーベルト(Sv)単位)は、3つの区分とする。すなわち、それぞれ、0.005Sv未満を極低線量、0.005から0.1Svまでを低線量、0.1から4.0Svまでを高線量とし標準化死亡比(SMR)を算出して、被爆線量区分別にがん死亡リスクを明らかにした。
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