1.地域単位(マクロレベル)での分析 地域(市区町村)を単位とした社会経済的指標の作成として、1980年~2000年の統計データをもとに指標開発を行った。学歴、高齢者単身世帯数、居住面積、失業率、所得、生活保護世帯割合を組み合わせて単一のインデックスを作成し、その利便性および妥当性を検討し、地域を単位とした健康格差研究に活用できる指標を提示した。 2.個人単位(ミクロレベル)での分析 健康格差をもたらす地域の社会環境要因と個人の社会経済要因の関連の分析として、国民生活基礎調査(昭和61~平成19年)と国民健康・栄養調査(平成15~19年)のマクロデータ(個票)を用いた分析を行うため、これらの調査のデータベースを作成し、分析を行った。その結果、低所得者ほど、さまざまな身体的愁訴および受診割合が高いことがわかった。高齢者では、低所得による受診抑制はないが、若年では受診抑制があることが示唆された。また、自覚的健康度と所得との関係性について経年的な変化を分析した結果、1990年代後半から、関係性が強くなっており、健康格差の拡大傾向が示唆された。 また、都市域を対象とした個人および地域の社会的要因と健康水準の関連を分析する目的で、昨年度の調査(300名、うち回答151名)に加えて、山口県の4つの自治体の住民(30~59歳)から無作為に抽出した650名を対象に調査を行った。その結果、363名から回答があった(回答率55.8%)。平成22年度は、その解析として、一般住民の健康格差に対する意識について分析し、高所得ほど循環器疾患およびそのリスクが高いという格差とは逆の認識であることがわかった。
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