研究概要 |
これまで、マンガンがnicotinamide N-methyltransferase (NNMT)活性に影響を及ぼし、nicotinamide (NA)から1-methylnicotinamide (MNA)への代謝が亢進し、神経毒性が生じるという仮説を検証してきたが、この実験系を神経細胞と同様に細胞分裂しない心筋細胞に応用し、我々の仮説が細胞の老化に一般化できるかどうかを検証した。 マンガンによる心筋細胞毒性とNNMT活性に及ぼす影響は、心筋細胞をマンガンの濃度を変えて培養し、MTT assayで生存率を測定するとともに、その培養液中のMNA量を測定した。また、NNMTのmRNAの発現量の比較も行った。 細胞生存率は、マンガン添加4日後の、0.1μMと10μMとの間に有意差が見られ、10μMで有意に生存率が上昇した。生存心筋細胞数で調整した培地中のMNA濃度は、マンガン添加4日後で、controlに比して0.1μM, 1μM, 10μMで有意に低下した。NNMT発現量は、マンガン添加6日後で、有意差ではないものの1μMまでは マンガン濃度が高くなるにつれ増える傾向がみられた。10μMでは1μMに比し、有意に低下した。 神経細胞とは異なる結果となったが、この違いが組織の老化メカニズムの違いによるものなのか、あるいは実験の方法論的な問題によるものなのか、心筋細胞の培養条件等を検討し、さらに研究を重ねていく必要がある。
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