好乾性真菌は、アトピー性皮膚炎の原因物質と考えられているダニと生活環境を同じくする。好乾性真菌の一つ、アスペルギルスがダニアレルゲンとともに皮膚バリア破綻時に皮下に侵入することを想定し、アスペルギルスの影響について検討した。NC/Nga系雄マウスを以下の5群に分け、マウス耳介へ2日ごとに8回、皮下投与を施行した。実験群は1. vehicle群(生食)、2.アスペルギルス群(0.5μg/ear)、3.ダニアレルゲン群(ヤケヒョウヒダニ抗原5μg)、4.ダニアレルゲン+アスペルギルス0.05μg/ear群、5.ダニアレルゲン+アスペルギルス0.5μg/ear群。皮下投与後24時間の皮膚症状を経時的に観察した結果、アレルゲンの投与によるアトピー性皮膚炎様症状は見られたが、アスペルギルス併用による症状増悪は見られなかった。しかし、血中総IgE量は、アスペルギルス併用により増加傾向を示した。また、皮下では好酸球や脱顆粒像を示すマスト細胞が顕著に増加していた。皮膚組織中のサイトカイン、ケモカイン(eotaxin、RANTES、IL-2、IL-4、IL-13、IFN-γ、MCP-3)を検討したところ、Th2サイトカインやケモカイン類にはアスペルギルス併用の影響がみられなかったが、Th1サイトカインであるIFN-γはアスペルギルス併用により産生が抑制されていた。以上の結果から、アスペルギルスは、皮膚バリア機能破綻時にダニアレルゲンと共に在ることで、アトピー性皮膚炎様症状を増悪することはなかったものの、IgE抗体産生、マスト細胞の脱顆粒、好酸球浸潤を増強させ、アレルギー反応を強める可能性が示唆された。
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