研究概要 |
本研究課題では、申請者らが従来実施してきた透析患者悉皆的コホート研究に参加した透析施設で保有している心電図情報を追加収集することにより、透析患者の心房細動有病率を明らかにするとともに、心房細動が透析患者の死亡や脳卒中発症リスクをどの程度上げるのかを明らかにすることを目的としている。上記25の透析施設長に心電図情報収集について周知し、各透析施設の透析スタッフと直接交渉し、心電図の複写作業についての具体的な日程を決めた後に研究者と研究支援者が透析施設を訪問して、心電図の複写収集またはスキャナによるノートパソコンへの取り込みを行った。平成21年4月から平成23年3月までに収集した心電図は1,511名分(92.6%)であった。ミネソタコード全てのデータ入力を行う前に、洞調律、心房細動、心拍数、QRS電気軸、脚ブロック、左室肥大所見右室肥大に関連する項目のピックアップ作業を行い、これらの項目を優先して入力作業を実施した。判読作業の済んだ433人分(男322人、年齢59.4±12.9歳、女146人、61.0±11.0歳)のデータの電子化入力作業を実施して横断解析を試みた。その結果、心房細動は12名(2.8%)で確認された。その他ペースメーカ調律が6名(1,4%)存在した。陳旧性心筋梗塞が14名(3.2%、前壁7名、下壁7名)存在した。ミネソタコードの左室肥大関連3項目のうち、少なくとも一つの所見を有するものは322例(74%)、右室肥大の項目のどれか一つを有するものは400例(92%)存在した。今後1,511名の透析患者全員の心房細動有所見率を確認し、一般住民データとの比較を通して心房細動有病率の標準化有病比を算出するとともに、心房細動有所見者の死亡リスク、脳卒中罹患リスクを定量的に評価する予定である。
|