研究概要 |
1, 510名の透析患者集団の心房細動有病者数は57人であり有病率は3.8%であった。同じ地域に住む一般住民(26, 469名、心房細動有病率1.5%)を基準とした心房細動標準化有病比(95%信頼区間)は、男女全体で2.59(1.91-3.26)、男性で1.80(1.29-2.30)、女性で2.15(0.66-3.63)であった。透析患者は一般住民と比較して心房細動を有している人が2倍多いことが判明した。 平均3.9年間(総観察人年3, 909)の追跡調査を実施した1, 009名の透析患者(心房細動あり35名、なし1, 074名)での心房細動あり群vs.無し群での非調整総死亡率、心血管疾患死亡率、感染症死亡率、心筋梗塞罹患率、脳卒中罹患率(/1000人年)は、それぞれ、279 vs. 88.7、96.5 vs. 43.2、96.5 vs. 22.9、22.0 vs. 11.3、55.2 vs. 47.3であった。平均5.6年(総観察人年147, 513)の追跡調査を実施した26, 469名の一般集団では(心房細動あり402名、なし26, 067名)、それぞれ、25.9 vs. 6.84、12.2 vs. 1.46、4.70 vs. 0.89、2.37 vs. 0.59、28.7 vs. 4.81であった。 ポアソン回帰分析により登録時の年齢を60歳、男女比を1/1に調整した心房細動による総死亡の相対危険(95%信頼区間)は、一般住民で1.76(1.34-2.31),透析患者で1.70(1.13-2.65)とほぼ同じ値であった。心血管死亡の相対危険は、一般住民で3.91(2.58-5.91),透析患者で1.27(0.64-2.50)で、心房細動は一般住民の心血管死亡リスクを4倍高めていたのに対して、透析患者では心血管死亡リスクを上げてはいなかった。感染症死亡リスクは、心房細動により一般住民(1.89(0.99-3.61))、透析患者(2.22(1.09-4.50))ともに約2倍上昇していた。脳卒中罹患リスクは心房細動の存在により一般住民で3.4倍(3.41(2.59-4.51))上昇していたが、透析患者では明らかなリスク上昇は観察されなかった。 透析患者では一般住民に比べ心房細動有病率は2倍高く、心房細動による死亡リスク上昇は一般人と同様1.7倍であった。一般人で観察された心房細動による心血管死亡リスク上昇と脳卒中罹患リスク上昇は、透析患者では観察されなかった。
|