研究概要 |
トリブチルスズ(TBT)の胎児期、乳児期、発達期の曝露による発達神経毒性を明らかにするために妊娠ラットに二世代曝露を行い、F1ラットの影響をマイクロアレイ、リアルタイムPCR、行動学試験で評価した。妊娠ラットにTBTを125ppm含む餌を与える群と通常餌を与える群を設定した。オスのF1ラットについて3週令まで母乳を介しTBTに曝露させた。この3週令時点のTBT-F1群とcontrol-F1群を6週令まで通常餌で飼育し、6週時点でそれぞれTBT餌を与える群と通常餌群に分け9週まで飼育した。結局3、6週令ではTBT-F1、control-F1群、9週令でcontrol-control(CC),control-TBT(CT),TBT-control(TC),TBT-TBT(TT)群を設定した。3、6、9週でマイクロアレイを行い、リアルタイムPCRで結果を確認した。6、9週では行動学試験を行った。その結果、tyrosine hydroxylaseが3週でup-regulatedされ、6、9週でdown-regulatedされるなどドーパミン代謝系の遺伝子に影響が見られた。行動学試験では6週でTBT-F1群、9週でTC,TT群に総行動距離の低下が見られるなどの影響が見られた。 またメスのF1群を用いた免疫学的検討で、胸腺、リンパ球サブセットの変化がTC群、TT群に見られ、免疫と神経の関連の検討も必要と考えられた。 更に間に曝露中断期を挟まない場合にはCT群にも行動抑制が発生した。その他TBTの代謝産物であるジブチルスズの神経毒性もin vitroのアストロサイト系細胞に対する毒性によって示唆された。 TBTによるドーパミン系に関連した神経毒性が行動抑制として現れやすいこと、免疫と神経の毒性の関連、発達期曝露の危険性、TBTの代謝産物の毒性などが明らかになりつつある。
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