研究課題
我々は今まで、トリブチルスズを妊娠ラットに餌に混ぜて曝露し、胎盤及び母乳を介してF1ラットに曝露し、離乳後の中断期間をおいた後の餌からの再曝露を行って、神経毒性を評価してきた。本年度は、トリブチルスズをラットに二世代曝露する上で、先行研究では離乳後に曝露中断期間をおいたが、今回は離乳後引き続いてF1に対しても餌を介しての曝露を行い、連続曝露及び離乳後すぐの曝露の影響を主に検討することとした。F1ラットの体重は胎盤及び母乳を介しての曝露では対照群に比べて有意に低いことは再現されたが、離乳後すぐの曝露(3週令から9週令)でも有意に低くなった。連続曝露群では更に体重の抑制が見られた。またオープンフィールド試験では、離乳後すぐの曝露のみでも対照群に比べ行動距離の有意な低下が観察され、連続曝露では更に顕著な低下であった。先行研究では、発達期以後のトリブチルスズ曝露による体重抑制、神経毒性は顕著ではなかったため、比較すると発達初期の曝露の危険性が示され、また連続曝露による強い毒性が示された。免疫毒性については脾細胞に関して、サイトカイン産生については毒性を示す所見は得られなかったが、リンパ球のポピュレーションに関しては、Pan T,NK,cytotoxic T細胞がトリブチルスズ曝露群で減少を示した。またF1ラットの大腿骨をマイクロデンシトメトリーで検討した結果、トリブチルスズ曝露群(経胎盤及び母乳曝露、成長後曝露、両方の曝露)においてbone mineral contentが対照群に比べて有意に低値を示し、骨代謝への影響の可能性も考えられた。ただし、トリブチルスズの代謝産物でもあり細胞毒性を示すジブチルスズが、吸収性人工硬膜に含まれていても、触媒として残存する量の5倍程度であれば、挿入したラットに神経伝達物質の影響は起こらない。
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The Kitasato Medical Journal
巻: 42 ページ: 67-75
巻: 42 ページ: 57-66