現在発がん性の主な指標は、変異原性の有無でありこれらはエイムステストに代表される各種の変異原性テストによってスクリーニングが可能である。しかし、近年のナノ粒子等に代表されるような非変異原性発がん物質が注目されている。現在の非変異原性のスクリーニング法は限られており、別の観点からの検討が必要である。近年炎症性サイトカインにより異所性にAID(Activation-lnduced cytidine Deaminase)が発現し、変異を誘発する可能性が示唆された。AIDは生理的条件下ではB細胞にのみ発現し、それ以外の体細胞には発現が厳しく制御されている。本研究では、これまで非変異原性ではあるが動物実験で発がん性が認められている物質が、B細胞系以外の細胞にてAIDを発現誘導するものがあるかどうかを検討し、AID発現を指標とした非変異原性発がん物質のin vitroでのスクリーニング系を樹立することを目的としている。方法としてルシフェラーゼにヒトAIDプロモーターを連結したベクターの恒常発現細胞株を作成して、AIDプロモーター活性をもつ物質をスクリーニングする系を作成する。本年度は、3種のAIDプロモーター領域をもつ(+67~-1491)(+67~-870)(+67-458)を作成し一過性のトランスフェクションによりAIDのプロモーター活性が得られるかどうかを各種の細胞株で検討した。その結果、いずれの3種類もTNF-alphaの刺激にてプロモーター活性を持つことが認められた。一方で、細胞株でバックグランドとなるAIDのプロモーター活性が異なることが判明したため、AsPC-1やLovoなどの細胞株がバックグランドとして適当と判断し、Hygromycinにてタイタリングを行い、トランスフェクション法にて現在恒常発現株を選択中である。恒常株が選択できれば、これまで特定されている非変異原性発現のAID誘導能を測定する。
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