平成21年度は、希土類粒子吸入曝露による健康影響に及ぼす、元素および粒子径の違いを検討するために、セリウム(Ce)の酸化物粒子CeO2の吸入曝露実験を行った。5μm粒径とカルシアドープした1μm粒径の2種類を、5mg/m^3、7hrs/日、5/週で、1または4週間マウスに曝露し、翌日、曝露中止後4週、12週の時点で解剖した。1年後まで観察を続けるため、一部は継続飼育中である。本研究ではCeとサマリウム(Sm)を比較する予定であったが、1μm径製品は購入予定であった信越化学で製造中止され入手不可であったことから、Smとイオン半径が近い希土類であるユーロピウム(Eu)に変更した。粒径5および1μmのEu2O3の吸入曝露実験を行い、経時的な観察と解剖を継続中である。CeO2粒子吸入による体重や肉眼的所見への影響は殆ど認められなかった。Ceは主に肺に沈着し、曝露修了翌日の濃度は曝露期間に依存した。1μm径は5μm径に比して数~10倍程度多く分布し、曝露終了後の4週間経過しても2割程度しか減少しなかった。肺の病理所見ではマクロファージの増加が認められたが、明らかな炎症などは観察されなかった。Ceは肺以外の臓器への移行は殆ど認められなかった。5μm粒径のSm2O3とCeO2を比較すると、SmはCeより肺に高濃度に沈着すること、SmはCeと異なり低濃度ながら肝や腎など他の臓器に移行し、骨には長期蓄積すること、など、元素による違いがあることが明らかになった。SmやCeは物理化学的性質が類似した希土類元素であるが、体内に取り込まれた後の挙動は異なることから、化合物によるイオンの価数、凝集の状態の違い、酸化物の溶解度の違い、などの因子を考慮して要因を検討した。
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