研究概要 |
初年度である平成21年度は、某事業所で定期健康診断を受診した労働者1,371人(うち女性175人)を対象に、気分調査票POMS,身体症状問診票,Job Content Questionnaire,睡眠を含む生活習慣を尋ねる質問紙バッテリーを実施した。このデータをベースラインとして2年目以降のコホート調査へとつなげていきたい。またうつ病のため長期休養に至った症例の追跡調査も並行して実施しており、その成果の一部は論文化された(中尾睦宏,竹内武昭,天野雄一,伊藤克人.日本心療内科学会誌,印刷中)。具体的には大うつ病のため職場休職となった20人(うち女性6人)に対してプロトコールに従った抗うつ薬による薬物療法を行い、復職までの治療経過をハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、Self-rated Depression Scale (SDS)、やる気スコア、Social Adaptation Self-evaluation Scale (SASS)により評価した。その結果、HAM-D、SDS、やる気スコアは治療4週後・8週後・復職時のいずれの期間も有意な改善を示し、SASSは復職時のみ有意な改善を示した。復職後7人が2ヶ月未満に再休職となったが、再休職あり群は再休職なし群に比べて、治療開始時と4週後のHAM-D総得点とSDS得点が有意に高く、治療開始時のHAM-D「仕事と活動」項目得点が有意に高かった。治療開始期のうつ状態が悪かった症例は、薬物療法により復職できたとしても再発しないよう十分に気をつける必要性が示唆された。
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