研究概要 |
平成22年度まで実施していた定期健康診断時の質問紙・面接調査の結果をまとめた。さらに各事業所の健康管理室スタッフ(担当看護師)と協力し、うつ病・うつ状態が疑われて健康相談をした症例に対しては産業医(研究班)がDSM-IV-TRに基づく(半)構造化面接を継続し、大うつ病、小うつ病、双極性障害、気分変調症、その他のうつ病性障害の診断後の経過観察を続けた。評価項目として、1)気分調査票POMS,2)Hamilton Depression and Anxiety Scales,3)やる気スコア,4)Medical Symptom Checklist(易疲労感、不眠、嘔気、息切れ、動悸、腰痛、下痢、頭痛、胸痛、四肢の痛み、耳鳴り、めまい、腹痛、関節痛の14症状を評価),5)パーソナリティ構造評定質問紙Temperament and Character Inventory,6)Job Content Questionnaire,7)Effort Reward Imbalance Questionnaire,8)社会適応度(Social Adjustment Scale)があったが、各症例の診断について各項目の有用性を研究分担者ならびに研究協力者と定期的に会合を開いて論議した。 うつ病の重症度に関しては、休職開始時と復職開始時とでハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、Self-rated Depression Scale(SDS)、やる気スコア、Social Adaptation Self-evaluation Scale(SASS)などの得点変化を比較したところ、いずれの質問紙得点も有意な改善を示していた。さらに復職順調群と、2ヶ月未満に再休職となった復職失敗群との2群に分けたところ、復職開始時には両群間でいずれの質問紙得点も有意な差がなかった。しかしながら復職失敗群は復職順調群に比べて、休職開始時と休職4週後のHAM-D総得点とSDS得点が有意に高かった。復職開始期のうつ状態の程度が悪かった症例は、さらなる注意観察が必要であることが示唆された。
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