研究概要 |
平成21年度に引き続き、軽度低酸素環境での失神の発生機序の一つとして想定される一過性の血圧低下に対する脳血流の調節・回復能力の低下について検討した。平成22年度は,2時間の低酸素曝露において、脳血流の回復能力の低下が出現するか検討した。被験者を15%酸素の環境に2時間曝露したのちに、大腿カフ解除法により惹起された一過性の血圧低下に対する脳血流の低下の程度、及び、その回復率を評価した。さらに、血圧変動に対する脳血流速度の変動割合をTransfer Function Analysisにて解析する方法も用いて脳血流自動調節機能を、変動のスピード別に評価した。その結果、Transfer Function GainとCoherenceは、ゆっくりとした変動部分である超低周波数帯(0.02~0.07Hz)においてのみ、曝露前に比べ増加した。つまり、ゆっくりとした血圧変動に対しては脳血流も大きく変動し、自動調節機能が減弱したと考えられた。また、大腿カフ解除法により惹起された一過性の血圧低下に対する脳血流反応としては、初期の脳血流速度の低下の程度に有意な変化はなかったが、後半のゆっくりとした回復の指標である回復率は、低酸素曝露前の半分ほどで有意に低下していた。つまり、軽度低酸素環境への2時間程度の曝露が動的脳血流自動調節に与える影響は、調節システムのうち、ゆっくりとした血圧変動に対応する部分で機能が減弱しており、また,一過性の血圧低下に対する脳血流の回復能力についても、比較的ゆっくりとした回復の部分において減弱している可能性が示唆された。
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