研究概要 |
H23年度は、C57BL/6、Nrf2+/+、Nrf2-/-マウスを用いて行ったH22年度の実験I*により採取した気管支肺胞洗浄液(BALF)サンプルを用いて炎症性サイトカイン含有量の測定を行った。その結果、BLM投与7日目に、Nrf2-/-ではNrf2+/+に比較し、BALF中のTGF-βの含有量が有意に上昇した。また、実験II*各群のBALF細胞の分画算定、および炎症性サイトカインの含有量の測定を行った。その結果、BLM肺線維症モデルにおいて、DEP曝露により総細胞数とマクロファージはいずれのマウスにおいても増多したが、Nrf2-/-ではNrf2+/+に比較し、DEP貪食したマクロファージが有意に多かった。好中球数はNrf2-/-で有意に増多した。BALF中のTGF-βの含有量はNrf2-/-で減少する傾向が見られた。 実験Iの結果により、Nrf2はBLM肺線維症病態を制御する主要因子と考えられ、肺線維症のリモデリング病態に関わる可能性が示唆された。実験IIの結果により、DEPの曝露実験系において、Nrf2の欠損はマクロファージの貪食機能を低下させ、好中球による炎症病態を増悪させる可能性が示唆された。本研究では、DEPが肺線維症病態を増悪することを確認し、Nrf2はその増悪病態を制御するキーファクターであることを示した。肺線維症病態に係る分子、抗酸化酵素の肺組織での発現、HOP測定は本課題最終段階での検討中であり、結果が出次第論文にまとめる予定である。 *実験I:BLM(80mg/kgBW)を経尾静脈的に1回投与し、0,3,7,10,14,21,28日目にBAL施行。*実験II:DEP曝露実験:Group1:生食水投与群;Group2:DEP単独曝露群;Group3:BLM投与群;Group4:BLM投与4週間前からDEP曝露群;Group5:BLM投与同時からDEP曝露群。各群において、BLM(80mg/kgBW or 生食水)を経尾静脈的に1回投与後10日目にBAL施行;蛋白・RNA解析のため肺組織を-80℃凍結保存。BLM投与後28日目に、肺病理組織標本を作製、Hydroxyproline含有量を測定のため肺組織-80℃凍結保存。
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