研究概要 |
カーボンナノチューブの生体影響を、ヒト由来胸膜中皮細胞を用いて評価した。本研究では,癌化が懸念される標的組織であるヒト胸膜中皮に由来する細胞であるMeT-5Aに対し,高度に精製されたCNTを曝露することで,その細胞毒性について調べ,次いでコメットアッセイにより遺伝毒性の評価を行った。また,核内に蓄積する8-OHdG量の変化を定量すると共に,新たな試みとして,酸化DNA除去修復酵素の発現変動についても解析することで, CNT曝露による酸化的DNA損傷の可能性について検証した。その結果,高純度の単層及び多層カーボンナノチューブの曝露では、8-OHdGの蓄積やカルボニルタンパク質の生成といったような、酸化的な細胞障害は観察されなかった。しかし、高純度のCNTを用いた場合にも,有意な細胞増殖の抑制と変異原性が認められたことから、誘発される胸膜中皮細胞のDNA損傷は,ゲノムDNAあるいはヌクレオチドプールの単純な酸化によってのみ起こるものではないことが示唆された。今後、アスベストとは異なる機序によるカーボンナノチューブによるDNA損傷作用の機序について更なる解析が望まれる。
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