研究概要 |
平成19年度よりアトピー性皮膚炎の発症関連要因及び予防要因解明を目的として、二世代継続前向きコホート研究である「九州・沖縄母子保健研究」を開始した。ベースライン調査、出生時、生後4ヶ月時、1歳時追跡調査にそれぞれ1,757、1,591、1,482、1,434組の母子が参加した。平成21年7月から開始した2歳時追跡調査を継続中であり、平成22年7月より3歳時追跡調査を実施している。 現時点で、4編の論文を投稿している。ベースラインデータを活用し、妊婦における兄弟数とアレルギー疾患有症率との関連を調べた。年上兄弟数とアレルギー性鼻炎との間に有意な負の関連を認めたが、喘息、アトピー性皮膚炎とは関連がなかった。妊婦における乳製品、カルシウム、ビタミンD摂取との関連については、喘息有症率のみカルシウム摂取と有意な負の関連を認めた。妊婦においてアトピー性皮膚炎の症例対照研究を設定し、IL13遺伝子多型rs1800925とrs20541との関連を調べた。Rs1800925のCC遺伝子型に比較し、マイナーTT遺伝子型では有意な正の関連を認めた。また、CT+TT遺伝子型と喫煙との間に有意なadditive interactionを認め、生物学的な交互作用が示唆された。Rs20541遺伝子型とアトピー性皮膚炎との間に有意な関連は認めなかった。124名の母親から母乳検体を得、4種の化学物質を測定した。β-HCH濃度を中間値で2群に分けると、高値群ではアトピー性皮膚炎有症率と有意な負の関連を認めた。HCB、DDE、nonachlordaneとは関連がなかった。 以上が平成22年度における研究成果である。今後はADAM33等、遺伝子多型の解析を進めつつ、栄養等の環境要因との関連の解析も進める。さらに、追跡調査のデータも採用し、生まれた子のアトピー発症と妊娠前後の環境要因及び遺伝要因との関連を解析する。
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