昨年度、液層分離法により作成した二酸化チタンのナノサイズ粒子懸濁液を0.2mgおよび0.5mg/0.4mlの投与量でエーテル麻酔下のラット肺に気管内注入を行った。気管内注入後、3日後、1ヶ月後、3ヶ月後の解剖は昨年度終了した。本年度はその後の6ヶ月後、12ヶ月後の解剖を昨年度と同様に遂行し、肺、肝臓、腎臓、脾臓、血液および気管支肺胞洗浄液を採取した。 本研究の最大の目的である体内動態を明らかにするためには、肺および各臓器中の二酸化チタン量を正確に定量する必要があるため、まず肺や他の臓器に存在していると考えられる二酸化チタン量を正確に定量できるか否かを回収実験を行うことにより確認した。方法は、臓器1gに0.5~500μgの既知量の二酸化チタン粒子を加えた試料を各3本ずつ用意し、これに硝酸、硫酸+硫酸アンモニウム(100ml+40g)溶液、過酸化水素を加え、マイクロウェーブ湿式灰化装置で酸分解を行った。分解後、溶液中のTiをICP発光分析装置で定量し、二酸化チタン粒子中のTi含有率から二酸化チタンナノ粒子量を算出した。すべての試料について90%以上の回収率が得られ、この方法により肺内二酸化チタン量が正確に定量できることを確認した。この定量方法を用いて、注入ラット肺内二酸化チタンナノ粒子量を定量し、肺内滞留性を求めた結果、0.2mg注入群では、半減期3.4ヶ月、0.5mgでは3.9ヶ月で肺からクリアランスされていることが確認された。今後は速度論的解析のため、他の臓器(肝臓、腎臓、脾臓、血液)中のTiの定量を行い、体内動態について明らかにしていく予定である。 また、各解剖時期における血液、気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、好中球数は、正常ラットとほぼ差異はなかった。今後は病理組織学的検討を行い、有害性についても検討していく。
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