研究課題
近年、環境要因が疑われる疾患(特にアレルギーなどの免疫異常症)が増えており、普遍的に存在する環境化学物質もその要因の一つと考えられている。さらに最近、免疫研究の分野でCD4+ヘルパーT細胞の中でもTh1やTh2に属さないTh17と呼ばれるインターロイキン(IL)-17を特異的に産生する細胞の一群が注目され、この細胞の分化増殖がTh1/Th2バランスの変化により生じる免疫異常症の増悪に影響を及ぼすことが報告された。また、このTh17の細胞分化を制御するマスター遺伝子として、レチノイド関連オーファン核内受容体RORが報告されたことから、環境化学物質によるRORを介する作用を明らかにすることは、環境化学物質と免疫異常を伴う各種疾患との因果関係を解明する一助になると考えられる。本研究では昨年度に続き、RORレポーターアッセイ法を用いて、様々な環境化学物質についてROR活性をスクリーニングした。その結果、有機塩素系殺虫剤、アゾール系殺菌剤、臭素系及び有機リン系難燃剤、ビスフェノールA誘導体などにRORインバースアゴニスト活性を見出し、さらに、植物由来化学物質にRORアゴニスト活性を見出した。これらのROR活性を有する化学物質のTh17細胞分化への影響を調べるため、マウスEL4細胞を用いてIL-17発現をRT-PCR法にて測定したところ、レポーターアッセイ法で認めたROR活性とIL-17mRNAの発現変化は良く一致することが認められた。以上の結果より、ある種の環境化学物質はRORを介してIL-17発現を制御し、Th17細胞分化に影響を与えることが推察された。また、本研究で確立したRORレポーターアッセイ法はTh17細胞分化に影響を及ぼす化学物質を探索するスクリーニング系として有用であることが示唆された(Kojima et al.投稿準備中)。
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